地方債は地方自治体が発行する債券の一種です。
債券を発行すると償還にかかる費用に加え、金利分の負担が増えます。
要は市の借金です。
借金というとマイナスのイメージがありますが、地方債を発行する必要はあるのでしょうか?
結論から言いますと、地方債を発行することは市の経営にとって、ひいては市民にとって大きなメリットがあります。
大きく以下三つの効果があります。
- ① 財政支出と収入の年度間調整
- ② 市民の負担の世代間調整
- ③ 一般財源の補完
① 財政支出と収入の年度間調整
①の例は道路や学校等の公共施設の建設や改修にかかる費用を考えると分かりやすいです。
施設の建設はもちろん、改修時にも多額の費用がかかります。
その費用を一年でまとめて払おうとすると、予算は限りがあるので赤字になったり、そもそも払うことが出来なかったりします。
地方債を発行することによって、複数の年度で分割して支払うことが出来るようになります。
② 市民の負担の世代間調整
②は①と考え方が似ています。
とある小学校の生徒数が増え、増築しなければならなくなったとします。
増築にかかる費用は増築を行った年の費用として全額払うのは正義1に適うものなのでしょうか。
小学校という施設は行事や災害時以外には主に小学生という限られた期間(世代)しか使用しないものです。
また、古い体育館を建て替え新しい体育館を建てるときの建設費等はその建設時の年度のみで支払うべきなのでしょうか。
完成後に利用する世代の負担は受益者負担(利用料等)だけでいいのでしょうか。
こういった世代間の不公平を地方債は極力小さくしていく効果があります。
③ 一般財源の補完
市が使うお金には大きく分けて一般財源と特定財源の二種類です。
一般財源は使途が決まっていないお金で市の独自の政策に使うことが出来ます。
特定財源は反対に、使途が決まっているお金です。
例えば、ごみ処理にかかる費用や街灯の電気代等々、市民にとって欠かすことの出来ないサービスに使われます。
地方債を発行しなければ、財政硬直化2を招くかもしれません。
市町村によって子育てに力を入れたり、農林水産業に力を入れたりとその所々によって特色があります。
この特色の部分は一般財源によって為せる業です。
一時の大きな出費を地方債を発行することによって、一般財源を確保出来るようになるのです。
以上のように、地方債は無くてはならないものですが、借金ですので利息が発生します。
また、将来のことを考えずに地方債を発行していると元利償還金(返済に充てるお金)が膨らみ、最悪の場合は地方自治体の破綻に繋がります。
金利の高かった時代に借りた地方債を、今の低金利の時代に借り換えることによって金利負担を減らす等、無駄なお金を少しでも減らす努力をしなければなりません。
参照:市議会議員のためのよくわかる地方債 月刊「地方議会人」別冊
注
1.ここで言う正義は「正義か悪か」という二項対立の意味ではなく、倫理的な正しさを指す。
2.予算の多くを必要経費が占め、独自の施策が行えない状態。
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